福岡での見学レポート(1週遅れ)

6月3日・4日に見学した病院について、感想をまとめます。
(具体的にどの病院か知りたい方は、twitterなどで。ちなみにコメントで「○○でしょ」という問いには答えないです)

・病院のアメニティがすごくキレイ、かなり開放されている
 病院のアメニティがとてもきれいでした。あんぼが見学した精神科医療機関の中ではピカ一でした。芝生で覆われた庭、病院食堂とは思えないキレイなカフェテリア、救急や急性期の機能も、とても工夫されていました。それに、病棟全部を閉鎖にするという考え方がないし、開放病棟は原則開放されている。開放病棟の中には離院のリスクがある患者さんもおそらくいると思うのだけれど、扉は開けてあって人の目と手で対応することにしている。
 また、デイケアを含めて全ての病棟の患者が参加可能な作業療法があることによって、入院時から退院後の状況をイメージすることが出来る。入院中と退院後の生活の変化を小さくすることができるようになるだろう。病棟を解放することのメリットは、単なる倫理的・情緒的な効果だけではない具体的な治療的効果も十分にあると感じた。

・治療の見える化が徹底されている
 患者に処方されている薬、治療方針、睡眠状況、食事の時間、服薬の時間などが原則的には患者が見えるところで公開されています。そうすることで得られるメリットはとても多くあると感じました。一つは、診療の効率化です。医師が数分の診察で効果的に診療を行う為には、かなり情報を的確に把握する必要があります。例えば、処方が変更されてから睡眠パターンの混乱が起きていないのか、行動範囲が拡大してから何日たっているのかなどです。それらを知るためには、思い切って患者のベッドサイドに情報を集約した方が良いのです。また、そうすることで患者自身が回復への主役であるという治療のオーナーシップを得ることも出来ます。
 治療の見える化を徹底することで、患者同士のスティグマが生じる事を懸念する人もいるでしょう。でも、見学した限りでは患者同士のセルフスティグマによる衝突が起きている場面は感じ取りませんでした。医療者がスティグマを持たなければ、患者もセルフスティグマを持たないのではないかと感じました。

コミュニタリアニズムが強い
 いわゆるコミュニタリアニズムが強いと思いました。P−Sミーティングと言う、集団精神療法をコメディカル同席で行うミーティングがありました。そこでは他の患者さんがある患者さんの状況の報告や今後の行動に関する意思決定に参加していました。そうすることで集団構成員としての行動も行っています。これは、治療の見える化にも一役買っています。ミーティングで患者自身が自分の状態を話すことで、状態の見える化を行っていることになります。
 コミュニタリアニズムについては、浦河べてるの家や断酒会などのセルフヘルプグループでも存在することなのですが、浦河や断酒会では回復期または予防のために行っているグループであることもあり、個人の尊重と共同体規範が衝突した時には個人の尊重に重きを置いているような印象を受けています。
 一方、急性期・救急での共同体は、個人の尊重よりも共同体の維持のための行動が尊重されるリスクを持ちます。共同体維持のための行動が尊重される場合、構成員である個々人が共同体を出た時に異文化に接することでのダメージが少ない(文化的差異が少ないか文化的差異に対応する能力が高い)事が必要です。地域文化と院内文化の際が少ないかどうかは、2日間の見学ではわかりませんでした。

いずれにせよ、精神医療の一つの形をもっている、素敵な病院であることに間違いはありませんでした。あんぼにとっては、浦河日赤病院とべてるの家に行った時以来の衝撃が走った2日間でした。