大学から職業教育学校へ、大学のふるい分け

高校が進学校と実業高校として存在するように、大学および専門学校も分類します。大学はふるい分けします、というニュース。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150603-OYT1T50150.html
政府は、実践的な職業教育や技能訓練を行う高等教育機関として「職業教育学校」を設置する方針を固めた。
 高校卒業後の進学や、社会人の専門知識の習得を想定している。学校は新設せず、希望する既存の大学や短大などに職業教育学校へ転換してもらう考えだ。4日の政府の産業競争力会議(議長・安倍首相)で原案が示され、月内にまとめる成長戦略の柱とする。
 中央教育審議会で詳細を検討する。学校の種類などを定める学校教育法の改正など、必要な法整備を来年度中に行う。2019年度からの実施を目指す。
 少子化が進む中、学生の確保に苦しむ私大や短大などの選択肢として制度化する狙いもある。大学が学部の一つとして併設できるようにする。

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http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150604/k10010102351000.html

 特に、地方都市にある専門学校や短大は、少子化の影響を受けているように感じます。過去には、入学定員を満たすために留学生を大量に入学させた大学もあったような・・。今回は、専門学校で学士が取得できるという私立大学との連携(という名の、・・・。)を一定程度意識しているのだと思います。こんなニュースもこれまでにあります。
http://www.kobe-np.co.jp/news/kyouiku/201402/0006687771.shtml

 また、定員充足の問題とは少し離れますが、そういう大学であっても入学する人がいる地域のことを考察してみます。首都圏など、選択肢が多い地域で18歳までを過ごす人たちにとっては進学での金銭的問題は授業料がほとんどとなりますが、進学と同時に一人暮らしをする学生とその家庭の場合には、進学での金銭的問題の中に住居費などが含まれるためにやむなく地元地域での進学または奨学金の利用となる場合があると考えられます。
 奨学金を利用する学生の割合は一定以上います。文部科学省日本学生支援機構の資料を見ると、平成24年ごろの資料で貸与中の者が約123万人いて、返還中の者が約292万人いることがわかっています。さらに、大学・短期大学の全学生数に対する日本学生支援機構奨学金の受給率は、平成11年度以降、急激に上昇し、平成22年度では35.9%(97万2千人)にのぼっています。
参考:独立行政法人日本学生支援機構の在り方に関する有識者検討会 第1ワーキンググループ(第3回) 配付資料:文部科学省
 少子高齢化が進んでいるにもかかわらず、18歳人口の人たちを取り巻く状況はあまり希望に満ちた状況とは言えない様子です。特に大学が少ない/ない地域で18歳までを過ごした人たちにとって、進学問題はかなり切実そうに見えます。

 さらに、高校までの教育内容に実学が非常に少ない(数学や物理・化学などである程度の基礎を学ぶとはいえ、これらを直接活用する仕事は少ない)ために、大学や専門学校で実学を学ばない場合には言われたことをその通りやるだけの労働者という道を選ぶしかなれない可能性があります。ただし現実的に考えると、センサー技術や情報処理方法の高度化によって多くの知的労働も置き換わる可能性が高く、多くの労働が世界から減っていくことになりそうです。一握りの管理的業務や創造的業務は一部の人々によって行われ、向こう30年程度は存在しそうな意味での専門的な業務は大学から名称変更する職業教育学校で行われ、義務教育程度の知識があれば経験でカバーできる意味での業務はそのまま労働として、行われるようになっていくのではないでしょうか。

 高校が進学校と実業高校として存在しているように、大学も教養を涵養する大学と実業学校として存在するように分離していくことになるのでしょう。実業高校のようなイメージですよと言われたら、多くの大学は開眼することになると思います。学士を与えればそれでいいのだ、という趣旨の経営をしている大学も、残念ながらある(あった)でしょうから。