自殺率を死亡数に対して計算すると別な事が見えてくる

まずは、このニュースから。

自殺率、秋田を抜き28年ぶり全国ワーストの県
2015年06月06日 08時40分
 厚生労働省が5日公表した2014年の人口動態統計月報年計(概数)によると、人口10万人当たりの自殺者数を示す「自殺率」は、岩手県は前年より0・2ポイント高い26・6で、1986年以来28年ぶりの全国ワーストとなった。
 脳血管疾患による死亡率も162・3で、全国ワーストだった。
 14年の自殺者数は341人で、前年より1人増えた。前年に自殺率ワーストだった秋田県が26・0となり、2位だった岩手県と入れ替わった。岩手県は自殺予防相談員の養成などに力を入れ、ここ10年間は自殺者数が減少傾向にあった。県障がい保健福祉課は「残念な結果。自殺が多い年代に焦点を当てるなどし、対策を取りたい」と話した。
 1人の女性が一生で出産する子供の推計人数を表した合計特殊出生率は、前年より0・02ポイント低い1・44で、全国平均(1・42)をわずかに上回った。
2015年06月06日 08時40分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150605-OYT1T50139.html

都道府県ごとの自殺率では、たしかに秋田県岩手県などが自殺率が高いです。
震災前ということで2010年のデータ*1で自殺率のランキングを作成すると、このような順位になります。
1 秋田県 31.86人
2 岩手県 27.82人
3 宮崎県 27.48人
4 新潟県 27.42人
5 沖縄県 27.21人
6 島根県 25.93人
7 青森県 25.92人
8 高知県 25.77人
9 鳥取県 24.97人
10 富山県   24.79人
この数字は「その県の人口10万人に対して1年間に自殺する人の割合」を意味します。
よって、ほとんど自殺が生じない0-14歳人口が少ない県や、男性女性とも自殺率が高くなる50歳代以降人口の割合が高い県では、ではこの統計手法では不利です。

そこで、「死亡数に対する自殺者数の割合」を計算する*2と、異なる結果が見えてきます。
   都道府県名 死亡に対する自殺者の割合 自殺者数 死亡数        
1 沖縄県  35.47人 379人 10,686人
2 東京都  27.61人 2,919人 105,723人
3 埼玉県  27.50人 1,586人 57,670人
4 千葉県  26.50人 1,370人 51,689人
5 神奈川県 26.39人 1,872人 70,946人
6 滋賀県  26.00人 309人 11,884人
7 福岡県  25.44人 1,224人 48,112人
8 愛知県  24.80人 1,481人 59,720人
9 大阪府  24.75人 1,954人 78,952人
10 宮崎県  24.04人 312人 12,980人
 両方でランキングされるのは沖縄県と宮崎県くらいで、あとは自殺率上位の件はランクインしません。都市とその近郊の都道府県で、死亡に対する自殺者の割合が高いことが判明します。

 つまり、都市部では、病気や事故で亡くなる人の数も少ないために相対的に自殺での死亡割合が高く、北東北などの地域では高齢者人口の割合が高いために人口に対する死亡そのものがおおい、という状況と考えることができます。
 逆に、どちらの計算方法でも自殺率が低い都道府県には、宮城、福井、徳島、奈良、三重、愛媛が入ります。ちなみに精神科医の数や精神病床数との関連も特に見出せませんでした。


 この数字は2010年および2011年のものを使用していますので、最新のデータではありません。
 私個人としては、自殺率の多少を議論しても仕方がなく、一人でも自殺を含む死亡が少ないことを望んでいます。
 そのため、自殺率の低下のための必要な方法を高齢地域と都市の両方で構築する必要があると考えています。

*1:厚生労働省

*2:人口動態調査(厚生労働省)をもとに計算しています