NHKスペシャル 移民漂流10日間の記録

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今回の3地点は、エチオピアイスラエル、ドイツ。国家の戦略と留まるところを知らない移民願望潮流の現場を追い、揺らぐ国家像と人々の新しい生き方を探る。
 エチオピアの北部から首都に向かうバスに82人の農民たちが乗り込んでいた。豊かな国、イスラエルへの移住を熱望する人々だ。厳しい宗教審査を受けユダヤ教徒と認められた彼らは、続々と「約束の地」へと旅立っていく。
 イスラエルでは、アラブ人の人口急増が国の根幹を揺さぶっている。イスラエルは危機感から古代ユダヤ人の末裔を世界中で探し、大量移民受け入れを進めている。しかし一方で、テロの不安から、若い世代はかつてのホロコーストの地、ドイツへと移住していく。
 戦後最高の失業率に苦しむドイツ・ベルリン。ユダヤ教会がそびえ立ち、ユダヤ移民が独自の社会を作り上げている。次々と押し寄せる移民とドイツ人失業者たちとの利害確執は沸騰点に達し、年に15万人ものドイツ人が、他国へと移住していく事態まで起きている。
 国家は深刻な少子高齢化対策で移民受け入れを打ち出し、移民は生きる権利を主張する。悪循環を断ち切るために国家はアメとムチを使い分ける。国家観、国民像は今大きく揺らぎ始めている。 

複数の地点で同時に起こっている様子をドキュメンタリーにすると言う手法は、海外ドラマの「24」をかなり参考にしたと思われる。
それはともかく、内容の話。
移民受け入れに関するドキュメンタリーでした。感想を少し。

  • 「労働力を維持するための移民の受け入れ」という考え方に違和感を感じた。

 移民を受け入れるかどうかを経済的な観点でのみ決定してはいけないと思う。また、イスラエルのようにイスラエル人政権を維持するための手段として決定してもいけないのだと思う。今回の放送では、ドイツに移民する人がいる一方でドイツを出る人もいることを伝えていた。ドイツを出るドイツ人の数、なんと15万人(年間!)。労働力のためにという考え方では、文化的な対立が起こったりするのは目に見えている。
 ちなみに日本では移民による問題と言われているような問題は現在のところはそれほどないように見える。一方で労働に関する問題は色々とあって、例えば今日の朝日新聞1面では、タクシードライバーの労働環境(待遇)の悪さを指摘するものだった。タクシードライバーの待遇の問題は、タクシー業界だけの問題であるという事ではないのだと思う。リストラetc.で職を失った人が行く場所が、建設業からタクシー業界に移った結果として人件費の低下がおこったのだと思う。
「労働力」と言う言葉で言えば、確かに日本も人口減少社会に転じているわけであるので労働力の減少は避けられない。でも、労働を生産性の分配という点で見れば、労働は文化的背景にかなり依存して生じるものである。(例えば、日米の牛肉輸入問題にも食文化に対する考え方の違いが引きおこしたものだと思う。あれは単なる生産箇所の問題ではなく、生産者の考え方の問題なのだと見ることも可能。)
 文化的背景を知らないままに別の社会に飛び込んだときに、果たして労働として成立するのだろうか?金銭だけを報酬(喜び)として働くことになりはしないだろうか?
 別に「日本国を愛してくれ」と大上段に構えるつもりはないのだけれど・・。でも自分の生活環境を愛することは、人間が生きていく上で必要なことなのではないのかなぁと思うのです。
 (おそらく、金銭的な豊かさによって生活環境を豊かにして愛することができるようになるという考え方もあるから、移民労働という考えもあるのだと思いますけれど。でも金銭で解決できるものばかりではないでしょう。)